2025/05/02投稿者:スタッフ

二重派遣とは?基本知識と派遣先の罰則をわかりやすく解説

1. はじめに:二重派遣に関する課題

派遣社員が別の会社から来ていた…それ、二重派遣の可能性あり?

 

「うちで受け入れている派遣スタッフ、実は別の会社の社員らしい…」

「契約は派遣会社Aと結んでいるけど、現場ではB社の名刺を持っている…」

 

こうしたケースは、意図せずに「二重派遣」という違法な状態になっている可能性があります。

これは、派遣先企業が派遣労働者をさらに別の企業に派遣することで発生します。二重派遣は、労働者派遣法で明確に禁止されている違法行為であり、知らずに関与してしまった派遣先企業も罰則対象となるリスクがあります。

 

本記事では、「二重派遣とは何か?」という基本から、起こりやすいケース例、派遣先として気をつけるべきポイント、そして法的根拠や罰則の内容まで、分かりやすく解説します。

 

 

2. 二重派遣の基本知識

二重派遣とは、派遣元企業から派遣された労働者を受け入れた派遣先企業が、その労働者をさらに別の企業に派遣することを指します。具体的には、以下のようなケースが該当します。

例:派遣元A社から派遣された労働者を受け入れた派遣先B社が、その労働者をさらにC社に派遣する。この場合、B社と労働者の間には雇用関係がなく、B社が労働者供給事業を行ったとみなされます。

 

2-1. 二重派遣が禁止されている理由

二重派遣が禁止されている主な理由は以下の通りです。

 

(1)労働者の保護

労働者が複数の企業間で派遣されることで、労働条件の不明確さや労働環境の悪化が懸念されます。

 

(2)中間搾取の防止

派遣先企業が労働者を再派遣し、手数料を得ることで、労働者の賃金が不当に削減されるリスクがあります。

 

(3)法的整合性の確保

労働者派遣法や職業安定法は、適切な労働者派遣の枠組みを維持するために、二重派遣を禁止しています。

 

 

3. 二重派遣に関する法律と罰則

二重派遣に関する法律と、二重派遣を行った際の罰則について解説します。

 

3-1. 職業安定法による規制

職業安定法第44条では、労働者供給事業を禁止しています。二重派遣は、この労働者供給事業に該当し、違反した場合、以下の罰則が科されます。

 

罰則内容:1年以下の懲役または100万円以下の罰金

対象:再派遣を行った派遣先企業および労働者を受け入れた企業

 

ただし、受け入れ先企業が二重派遣であることを知らずに労働者を受け入れていた場合、罰則の対象外となることがあります。

 

3-2. 労働基準法による規制

労働基準法第6条では、中間搾取の排除を規定しており、二重派遣はこれに該当します。違反した場合、以下の罰則が科されます。

 

罰則内容:1年以下の懲役または50万円以下の罰金

対象:再派遣を行った派遣先企業

 

これらの罰則は、企業の社会的信用を失墜させるだけでなく、経済的な損失も招く可能性があります。

 

 

4. 二重派遣の具体例

二重派遣が発生しやすい業界として、IT業界が挙げられます。例えば、システム開発プロジェクトにおいて、派遣社員がクライアント企業に常駐し、クライアント企業の指揮命令下で業務を行うケースがあります。この場合、指揮命令権がクライアント企業に移っているため、二重派遣に該当する可能性があります。

 

例:派遣元A社から派遣されたエンジニアが、派遣先B社の指示でクライアントC社に常駐し、C社の指揮命令下で業務を行う。

 

このような状況を避けるためには、指揮命令権がどの企業にあるかを明確にし、適切な契約形態を選択することが重要です。

 

 

5. 二重派遣を防ぐための対策

二重派遣にならないように、事前の対策方法をご紹介します。

 

5-1. 契約内容の確認

派遣契約を締結する際には、労働者の就業場所や指揮命令権者を明確に定めることが重要です。これにより、二重派遣のリスクを低減できます。

 

5-2. 労働者の就業状況の把握

派遣元企業および派遣先企業は、労働者がどのような環境で業務を行っているかを定期的に確認し、適切な指揮命令系統が維持されているかを監督する必要があります。

 

5-3. 教育・研修の徹底

派遣先企業の担当者に対して、労働者派遣法の基本や二重派遣に関する法的リスクを周知する教育・研修を定期的に実施することが効果的です。現場の無意識な行動が二重派遣に該当するケースもあるため、担当者が正確な知識を持つことが重要です。

 

5-4. 労働者派遣契約と業務委託契約の区別

IT業界や製造業などでありがちな誤解の一つが、「業務委託契約=自由に働かせられる」という認識です。しかし、実態が指揮命令下にある場合、契約形式に関わらず派遣とみなされる可能性があります。委託業務では、成果物に対して報酬を支払う契約であるため、業務の進行方法や勤務時間に関与すべきではありません。

 

5-5. 外部専門家の活用

派遣契約や就業実態に不安がある場合は、社会保険労務士や労働法に強い弁護士など、外部の専門家に相談することも有効です。法律や判例は定期的に更新されており、常に最新の情報に基づいて判断する必要があります。

 

 

6. まとめ

二重派遣は、労働者派遣法および職業安定法で厳しく禁止されている行為であり、企業にとっては重い罰則と信用失墜という重大なリスクを伴います。特に、ITや製造などプロジェクトベースでの人材活用が多い業界では、指揮命令の所在が曖昧になりやすく、知らぬ間に違反に該当することも。契約内容の明確化、労働者の実態把握、内部教育などを通じて、二重派遣を未然に防ぐ体制づくりが求められます。企業の信頼性とコンプライアンス体制を守るためにも、今回紹介したポイントを日々の運用に役立ててください。お電話でのご相談:0120‐085‐075