2025/05/30投稿者:広報担当

派遣のつもりが違法行為!?人材派遣における「禁止業務」とは

「多様な働き方を推進したい」

「必要な時に必要なスキルを持つ人材を活用したい」

 

そう考える多くの企業にとって、人材派遣は有効な選択肢の一つです。

しかし、その利便性の裏側には、法律で明確に定められた「派遣禁止業務」が存在することを忘れてはなりません。

「まさかうちの会社が…」と他人事ではありません。もし知らずに禁止業務へ派遣スタッフを従事させてしまえば、企業には重い罰則が科せられる可能性があります。

 

本記事では、なぜ派遣に禁止業務が存在するのか、その根本的な理由と、具体的にどのような業務が「NG」とされているのか、その概要を分かりやすく解説します。

コンプライアンス遵守は企業運営の根幹。まずは、この重要なルールをコンパクトに理解しましょう。

 

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1.なぜ「禁止業務」がある?労働者派遣法の意図

労働者派遣法は、派遣労働者の保護と派遣事業の適正な運営を目的としています。

派遣禁止業務は、特定の業務の特性上、派遣という働き方が労働者の保護や業界の安定を損なう可能性がある場合に定められています。専門性、安全性、雇用の安定などが考慮されています。

 

1-1.企業が押さえるべき「5つの禁止領域」

原則として禁止されている業務は以下の5つです。

  • 港湾運送業務
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 病院・診療所等における医療関連業務(原則NG、一部例外あり)
  • 弁護士・社会保険労務士等の士業(原則NG、一部例外あり)

これらの業務は、それぞれの業界の特殊性や働く人々の保護の観点から、派遣での就業が原則認められていません。

 

1-2.注意すべき「人事労務管理」における禁止事項

上記に加え、派遣先での団体交渉や労使協議における使用者側の直接当事者としての業務も、派遣スタッフに担当させることは禁止されています。

 

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2.具体例で確認!「それ、アウトです」派遣NG業務の要点と理由

この章では、前章で挙げた5つの派遣禁止業務について、具体的な内容と禁止理由の要点を解説します。

 

2-1.港湾運送業務

【業務内容】

埠頭での貨物積み下ろし、船内作業、荷造り・荷ほどき、倉庫運搬など。

【禁止理由】

業務量の変動が大きく、労働者の安定雇用が難しいため。「港湾労働法」による雇用安定化制度あり。

 

2-2.建設業務

【業務内容】

建築・土木工事の作業全般(資材運搬、組み立て、掘削、内装など)。

【禁止理由】

安全管理と責任の所在を明確化するため。「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」で直接雇用が原則。事務スタッフ派遣は除く。

 

2-3.警備業務

【業務内容】

 施設警備、交通誘導、貴重品運搬、身辺警護など。

【禁止理由】

「警備業法」により請負契約が原則。警備の専門性と責任の所在を明確にするため。繰り返される場合は受付業務などもNGとなる可能性あり。

 

2-4.病院・診療所等における医療関連業務

【業務内容】

医師、看護師、薬剤師、検査技師、理学療法士など、医療行為に直接関わる業務。

【禁止理由】

チーム医療と責任体制の重要性から。ただし、紹介予定派遣や産休・育休代替などは例外あり。医療事務は派遣可能。

 

2-5.弁護士・社会保険労務士等の士業

【業務内容】

 弁護士、社労士、公認会計士、税理士、行政書士など。

【禁止理由】

高度な専門性と独立性から、指揮命令を受ける派遣形態になじまないため。一部業務、特定の派遣元での派遣は例外的に認められる場合あり。

 

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3.例外規定を解説!派遣「OK」となるケース

原則NGでも、特定の条件で派遣が認められる例外を解説します。

 

3-1.医療関連業務の例外

医療関連業務では、以下のケースにおいて、派遣の活用が例外的に認められています。

(1)紹介予定派遣

派遣期間(最長6ヶ月)終了後、派遣スタッフと派遣先企業の双方が合意すれば、正社員や契約社員として直接雇用されることを前提とした派遣の場合

 

(2)代替派遣

産前産後休業、育児休業、介護休業中の労働者の代替を目的とした派遣の場合

 

(3)地域限定

離島やへき地など、医師の確保が困難な地域において、厚生労働大臣が医療従事者を確保するために派遣スタッフを従事させる必要があると認めた場合

 

 

3-2.士業の例外

士業においては、その専門性を考慮しつつ、以下の資格について、限定的な業務範囲において、特定の派遣元からの派遣に限り、例外的に認められています。

(1)公認会計士

監査以外の業務を、監査法人以外の会社から派遣される場合

 

(2)税理士

税理士の補助的な業務を、税理士・税理士法人以外の会社から派遣される場合

 

(3)弁理士

特許申請などの手続き以外の「相談業務(コンサルティング)」を、特許業務法人以外の会社から派遣される場合

 

(4)社会保険労使士

社労士法人から、他の社労士事務所や社労士法人へ派遣される場合

 

(5)行政書士

行政書士や行政書士法人から、他の行政書士事務所や行政書士法人へ派遣される場合

これらの例外は、士業の専門性を尊重しつつ、派遣という働き方との整合性を図るために、業務範囲や派遣元・派遣先の関係が細かく限定されています。これらの例外規定を適用する際には、関連法規を十分に確認することが重要です。

 

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4.まとめ:NG業務を避け、適法な人材派遣を

人材派遣には禁止業務があり、違反した場合の罰則は重いです。

港湾運送、建設、警備、医療、士業が主な対象です。ただし、紹介予定派遣や代替業務など、一部例外もあります。法令遵守のため、NG業務をしっかり理解し、適切な人材活用を行いましょう。お電話でのご相談:0120‐085‐075